2020年6月5日

小平なみき保育園(取材日:2019年6月6日)

小平なみき保育園は、東京都小平市にある「なみき幼稚園」に併設された乳幼児専門保育園です。2018年には「子ども環境学会 子ども環境デザイン奨励賞」にも選ばれました。自然豊かな環境の中で子どもたちが主体的に行動できるように設計された園舎への想いについて、お話を伺いました。

登園時間に伺うと、職員の皆さんと園長先生が玄関周辺を掃除されていました。門から玄関まで緑のアーチが頭上に広がり、とてもリラックスできます。

 

小平なみき保育園は、平成29年4月に開園した新しい保育園です。隣には50年の歴史と伝統をもつ、なみき幼稚園があります。保育園設置のきっかけとなったのは、「これからは幼稚園だけでなく、保育園も必要になる!」という理事長の思いからでした。園長の日景さんは秋田出身で、ご実家が幼稚園を経営されていましたが、「保育園の方が需要がある。東京で働こう。」と思い上京されました。奥様がなみき幼稚園で働いていたことがきっかけで理事長と出会って意気投合し、保育園の設計から携わることになりました。

なみき保育園には、理事長と園長のこだわりが詰まっています。田舎の里をイメージし、自然豊かで子どもや職員が居心地の良い環境にしました。「どうせ作るなら遊ぶスペースがたくさんほしい」と、様々な保育園を設計士さんと見学し、参考にしていったそうです。

例えば、砂場。川の砂と山の砂を用意し、遊びによって使い分けられます。川の砂はさらさらとしているので、山を作ったり壊す楽しさを味わえ、山の砂は粘土質なので泥団子を作るのには最適です。

さらに砂場の囲みには起伏を作り、段差によって足の力をつけられる配慮があります。

園庭や砂場で裸足になり、感触・感覚遊びが楽しめるように、砂は定期的に入れ替えて衛生を保つようにしているそうです。

オリジナルの滑り台は、登り階段が無く、自分の足の力で登れるようにし、2歳くらいでお友だちと一緒に滑りたい気持ちを考慮し、2人で滑られるように幅広になっています。

園庭以外でも工夫が見られます。園庭で泥んこになって遊んだ後に、外に設置しているシャワーで体を清潔にしてから園舎に入れるようになっていたり、縁側には柵をあえて設けず、子どもたちが自分で上り下りできるような高さになっていたり。

縁側に関しては、新年度などは職員が側について上り下りをサポートすることで使い方を覚えるのと、子どもたちが環境を知って慣れるため転落がないそうです。

ベランダのスペースでは、マットの上で遊ぶ子がいました。また、外で裸足になって遊ぶ子もいて、子どもたちが自分で遊びたいものを選んで遊べるように設定されています。

 

普段の保育は、0歳児は今の時期はお散歩に行き、後半くらいから砂遊びをしていて、1歳児は今年は低月齢も多かったため低月齢と高月齢に分けて保育しています。2歳児は活動に応じて人数を分けたりしています。その年に合わせて環境設定を職員と話し合って変えているそうです。

 

園内を紹介してくれた主任の岡﨑さんにもお話を伺いました。岡﨑さんは、主任を務めながら週に1回キッズヨガを子どもたちに教えています。キッズヨガの資格取得後に新園で保育士を募集していたなみき保育園を知り、子どもたちにヨガを教えたいという想いを伝えたところ、理事長と園長先生が関心を持ってくれて採用となったそうです。

 

岡﨑さんに、職員配置と職員間のコミュニケーションについて伺いました。

なみき保育園の職員配置は規定の職員数より2~3名多くなっています。子どもがどろんこになって遊んだ後にシャワーをしてあげる際に人手が必要になるという理由でもあるそうです。

「職員の人数が多いため、毎日お昼にクラスの状況を報告する時間を作っています。月に1回クラス主任会議やリーダー会議をしていて、非常勤会議も年に何回か行っています。会議は業務時間内に行うようにし、夕方には行わないようにしています」と話してくれました。

 

クラス内の書類や業務、職員間での分担について伺うと、「業務は少ないと思います。必要なことは行っています。大人の手が多いので、一人抜けて事務作業することができます。」「キャラクターものの装飾は避けて、子どもたちが持ってきた松ぼっくりなど自然のものを飾るようにしています。また、作り過ぎないように、子どもたちが遊んで楽しんだものを製作として飾っています」と教えてくれました。

 

職員間の仲を深める工夫は玄関にもありました。「子どもたちの毎月の誕生日会はなく、誕生日のその日にお祝いしてあげます。職員(調理員も)もお祝いします。」とのこと。職員一人ひとりを大切にしている様子が伺えました。

離職率も低く、開園して3年で退職者が3人だそうですが、皆さんやりたいことがあるため円満退職し、今でも遊びに来てくれるそうです。

 

園長先生の想いとして「子どもたちには自分で選ぶということを大事にしてほしい。職員が誘導する必要はなく、大人がやれば子供は真似する。必ずやりなさいではなく、裸足保育でも靴を履きたい子は履いてもいい。」

『自ら選ぶ』『誘導はしない。子どもは大人の真似をする』と仰る園長先生は、園庭などの木や植物が生い茂ってくると、自分で剪定して子どもに危なくないようにしているそうです。

「自分が出来ることはやる!用務員がいない代わりに自分がやることでその分を人件費に回すことができる。」と園長先生のこだわりポイントを教えてくれました。

そんな園長先生の自慢は保護者と共に作った手作りぶらんこだそうです。

 

開園して3年目、職員と保護者の「こうなってほしい」を環境に含めていきたいと語る園長先生のこだわりが詰まったなみき保育園は、子どもと職員が主体的に活動する、自然豊かな環境でリラックスできる保育園でした。

(取材担当:Y)

 

学校法人なみき学園 小平なみき保育園

http://namiki-hoikuen.net/